皮膚に直接まとわりつく湿り気が狂ったように熱帯びる夜
山に鳴る金管の冴えた音色より短い夏を謳歌する蝉
灼熱の真夏の炎に身を焦がし命短し恋せよ若蝉
島風に揺られそよいだ緑葉の鮮やかなるは夏の名残か
儚くも終わる定めと知りながら乾いた蝉の死体の哀しき
ちりちりと胸を焦がすわ夏の恋 線香花火がぽとりと落ちた
何処行った 我らが春は何処行った 桜散ったらもう既に夏
昼間からきみとビールを煽る初夏 クーラーつけたらまだ寒いよな
陽を浴びた部屋から夏の匂いがし まだ見ぬ猛暑感じさせられ
四月末クーラーをつけていることが世界に対して申し訳無く
始まったばかりの夏を憂うのは終わるその日を知っているから
ぽつぽつがざあざあになる水無月に揺れる空気はもう夏の色
瀬戸内の小さな島に人の波 夏が来たぞと花火見上げて
味の無い炭酸水が喉の奥弾けて夏の夜の風呂上がり
青い春過ぎて眩しく光る夏 足元はもう小さい秋に
入道雲便箋にして手紙書く 夏の空色インクで君へ
太陽と愛とエロスと騙し合い 甘く切ない真夏のサザン
薄い屋根叩く雨音耳澄まし 梅雨入りを知る六月の夜
大きめの夏が到来する予感 寂れたプールに響くサザンとか
オレンジに光る枇杷の実 夏の陽を浴びて甘さを増す恋心
梅雨の夕 厚い雨雲かき分けて真っ赤な光覗かせる空
停滞す梅雨前線 瀬戸内は荒れて帰りの船も出ぬまま
夏だよ!と知らせる暦 夏至の夜ひやりと触れる雨粒ひとつ
クーラーの匂い懐かし この部屋に立ち込める夏今宵閉じ込め
大輪の花火が咲いたこの町は夏が終われば融けてきえます
夏が言う「そんなに期待されてもね キスなら秋でもできるでしょうに」
しとしとと町を濡らすは半夏水 文月の夜に月が隠れき
トンネルを抜けたらそこはどしゃ降りで街の明かりが雨に霞んで
ベランダでひっくり返っている蝉の死骸を捨てて夏は終わった
【八百万の神が呼ぶ 夏を詠う】
2011年から2012年6月の間に夏を詠んだ歌を集めました。日焼けさえ気にしなければ夏はいちばん好きな季節なので、春夏秋冬の中では量が最も多いかもしれません。というか、広島の夏が長すぎるんでしょうね…。
0 件のコメント:
コメントを投稿